顔タイプ診断についてのコラム(新しいファッションの法則、顔タイプ診断って?)は多くの方に読んでいただき、ありがとうございます。
ファッションの診断手法としては(1)アメリカ発祥で1980年代に日本に紹介されたパーソナルカラー診断、(2)近年日本で普及した骨格診断、(3)最新の顔タイプ診断と、進化を続けています。(1)〜(3)の各分野の中でも考え方は一つではなく、歴史が長いほど流派も増え多様化しています。
こうして「似合う」ってどういうことなのか、いろんな角度から研究して下さる方がいることは、私たちにとってとてもありがたいことですね。
けれども、おしゃれになるためにどれだけ診断を受けたらいいのでしょうか? また、何種類も診断を受けて結果は知っているけれど、自分のファッションにどう生かせばいいの?と迷われる方もいるのではと思います。
今回はパーソナルスタイリストである私がおすすめする、各種診断のとりいれ方について書いていきます。
■3つの診断はどれが正しいの?
以前のコラムでも書いたように、それぞれの診断手法は、服を着る私たちを違った角度から捉えているものでどれが決定版とか、どれが正しい、というものではないんですね。
顔タイプ診断の本のAmazonレビューでは、骨格診断とカラー診断では納得できなかったことが顔タイプ診断で納得できた。謎が解けた。
という感想がもっとも多いのですが、これをもって顔タイプ診断が真実である、と取るのは早計です。顔タイプ診断をディスりたいわけではなく3つの診断法はお互いに補いあうものだからです。
例えばここにチューリップが一輪あるとします。
- 赤いチューリップ
- 丸い花弁のチューリップ
- かわいいチューリップ
赤い、丸い、かわいい、のどれが正しくて間違っているかと問うのはナンセンスですよね。色、形、与える印象の3つがそれぞれ、そのチューリップの特徴の一面を正しく言い表していますから。
パーソナルカラー、骨格、顔タイプの診断も同じです。これさえあれば服に悩まずに済む万能の特効薬のようなものではなく、三者どれも正しくて、全てそろえばより正確に人の外見の特徴を捉えることができるわけですね。
それでは3つの診断結果を得たとして、どう使えばいいのでしょうか?
まず、お洋服のどんな面が各診断で扱われているかを大まかにご説明しますね。
ファッションの3要素
- 色
- デザイン
- 素材
どんな服もこの3つの要素からなっています。パーソナルカラー診断は色の担当です。デザインと素材は骨格診断にも顔タイプ診断にも関係してくる要素。
これに加えて服には
- テイスト
という抽象的なイメージがあります。かわいい服、かっこいい服、女らしい服、という風に言い表します。顔タイプはこういったテイストを決定づけるものとされています。
似合う色・・・・・・パーソナルカラー診断
似合うデザイン・・・骨格診断、顔タイプ診断
似合う素材・・・・・骨格診断、顔タイプ診断
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似合うテイスト・・・顔タイプ診断
パーソナルカラーは診断結果が顔タイプ、骨格診断と対立することはあまりなさそうです。パーソナルカラー診断が扱う「色」は他の2つとは独立した領域のようですから。
ところが骨格と顔タイプでは、共通の要素が担当なので対立することがあり得ます。問題になってくるのは、顔タイプ診断と骨格診断で似合う服の方向性が違っているケースです。
■「服から出ているのは顔」だけど「服を着るのは体」
例として、もう一度
パーソナルカラー:スプリング
骨格診断:ストレートタイプ
顔タイプ診断:フェミニン
というケースで考えてみましょう。深田恭子さんのような方ですね。
骨格診断の本には必ず書かれている基本的なこととして
ストレートタイプ → かっこよくてきちんと感のあるシンプルな服が似合う。直線的な柄とデザインが似合う。メンズライク。カジュアルが苦手。
そして顔タイプ診断では
フェミニンタイプ → きれい目で女性らしい服、シンプルでもどこかに曲線を含むデザインが似合う。ギャザーやボウブラウス、華やかなファー付きアウターなど。柄は曲線的なもの(ドット、ペイズリー、ヒョウ柄)
カジュアルがNGできれい目のお洋服が似合うという点は、両方の診断結果で共通しているので間違いなさそうです。実際に、深田恭子さんはそういったお洋服がよくお似合いです。一方「きれいめ」以外の部分では、メンズライクVSフェミニン、直線VS曲線、と骨格と顔タイプで逆の要素が示されています。
こういった対立は一般の方でもよく起こるので、どちらを取ったらいいのか悩むところかもしれません。
これに関しては、岡田実子著『顔タイプ診断で見つかる本当に似合う服』の中で言われている「顔タイプが決め手」との考え方に対しては、パーソナルスタイリストである私は、ちょっとだけ待ったと言いたいのです(笑)
理由は、顔タイプの診断結果を決め手と考えることで、失われれることもあるからです。
岡田実子さんが著書でも書かれているように「骨格診断というのはスタイルが良く見える、着やせして見える服を教えてくれるもの(ただしその人に似合うテイストを教えてくれるものではない)」。
骨格診断=スタイルアップ
これは私の経験からもとても正しいと思います。
けれども、お顔立ちに会うテイストを最優先すればその方が一番素敵になるかというと、そうとは限らないケースも多いと私は感じています。これが岡田さんと私の意見が分かれるところかもしれません。
私のところにパーソナルスタイリングのご依頼をくださる方は、30代後半〜50代前半くらいの大人の女性が圧倒的多数なのですが、その方々のほとんどが、これまで着ていた服が似合わなくなった、ということで悩まれています。そしてその「これまで着ていた服」というのは、顔タイプでは似合うテイストの服だけれど、骨格診断タイプには合っていない、というのが「違和感」の正体だったことが非常に多いのです。
顔というのは、服から出ている最も目立つ部分ですから、その方の印象全体を決定づけることは否定できません。それだけ目立つ分、誰にでもとらえやすい側面とも言えます。そういう意味で、お顔立ちに似合うお洋服は、専門家でなくても選別することが比較的簡単なんですね。ですから、ご自分でもそのイメージに似合う服を選んできていて、ご家族やお友達からも褒められていた。ところが年齢を重ねるに従って出てきた違和感は、「服から出ている顔」ではなく「服を着る体」の方に原因があることが少なくありません。
骨格体型の影響は、年齢が上がるほどに顕著に出てきます。若い頃には問題なく着られていたお洋服がだんだん着られなくなってきたというのは、逆を言えば、若い頃には骨格など考えなくても顔立ちと雰囲気でお洋服を選んでいれば素敵に見えていた、というわけなんですね。
さて、岡田さんがオススメされているお洋服選びの手順として、まずは似合うテイストのショップに行きましょう、そして、そのお店でスタイルよく見える形、似合う色を探しましょう、と書かれています。骨格の影響の少ない若い方ならそれでいいと思います。
けれども、日々スタイリングでお客様のお買い物に同行している私から見ると、顔タイプからのテイストでショップを絞ってしまうことは、あまり効率が良くありません。顔タイプに合っていて、好みのディテール満載でときめくお洋服であっても、着てみるとバランスが悪く、スタイルの良く見えない服というのを人は買いたいと思わないんですね。逆もまた然りで、どんなにスタイルアップしていても、テイストが好きな服でなければ買いたくならないという面もあるので、難しいところなのですが・・。
少し専門的なお話になりますが、お洋服の各ブランドにはターゲット年齢があります。どの年代の方をメインの対象としているかで、価格やデザインだけでなく、服のパターン(型紙)が違うんです。サイズ感も違います。20代ターゲットのブランドでは11号サイズの方が、50代ターゲットのブランドで7号サイズということもありえます。これは売るための戦略でサイズ表記を下げているのではなくて、その年代の体が綺麗に見えるように服が設計されているということです。このことは服が持っているテイストとは別次元のお話ですから、テイストやイメージよりも、まずはお体にフィットして美しく見せてくれるブランドを探してみられることが、大人の服選びには必要だと思います。
顔タイプ診断では、似合うテイストのお洋服を着ていると「自分をわかっている人」に見えるという強みがあると述べられていますが、私が感じるのは、骨格診断に合わせてスタイルがよく見える服を着ている人は、圧倒的に
- 垢抜けて見える
- 洗練されて見える
というメリットがあります。これは私たち大人世代のファッションには、本当にすごく重要な要素だと思います。
上で出した例のように、フェミニンな服を着ていて違和感がある方が、骨格診断を受けてストレートタイプ、顔タイプはエレガントと診断されました。でも顔タイプのテイストの方が好みだったのでそちらを優先した結果「何だかもっさりな人」に戻ってしまっては残念だと思うのです。
そんなわけで、大人世代のパーソナルスタイリストとしては、似合うテイストの服の前に、スタイルアップするお洋服を基準とすることをお勧めしたいと思います。
そうして基準を骨格診断に合わせた上で、それでも違和感がある方(顔タイプが骨格タイプと逆方向の方)は、顔タイプに合った要素を少しづつ取り入れてみてください。
■骨格診断で違和感が残る人は顔タイプの検討を
特に骨格診断でストレートタイプと言われて戸惑っている方に、顔タイプ診断の要素を考えてみることは役立ちます。ストレートタイプに似合うのは、シンプルベーシックで直線的できちんとした服とい言われているのですが、お洋服のバリエーションが狭められたように感じて困る方(デザイン性のあるものがNGとされるため)や、典型的な服ではハードすぎたりかっこよすぎたりして違和感を持つ方も少なくありません。
実際に私のお客様でも何人かいらっしゃったのですが、スーツの似合わない骨格ストレートタイプの方は一定数おられます。お体を見れば厚みのあるメリハリ体型で、迷うことのないストレートなのですが、セオリーでは似合うはずのスーツが、リクルーターのように見えたり、着せられている感があったり。この方々に共通していたのはお顔立ちでした。顔タイプがフレッシュタイプ(カジュアルテイストが似合うタイプ)の方が特に「何かちがう」という感じに。これも骨格と顔タイプの不一致ですね。
顔タイプがフェミニンの深田恭子さんも、骨格のストレートタイプに合わせた、シンプルすぎるスタイルよりも
顔タイプのフェミニンに合わせた下のスタイルの方が「らしさ」が出ているように思います。
ただし、ストレートタイプの体格をすっきり見せないデザイン(下写真では、ウエストを太ベルトでマークした広がるスカート)は、女らしいテイストでも微妙かな、と思います。
骨格診断で違和感が残るという方々は顔タイプを考慮してみることで、より自然になじむお洋服に出会えると思います。その際、骨格も無視しないで体のラインや着太りしていないか、注意してみてください。
■まとめ
長文をお読みくださりありがとうございました。ここまでのポイントです。
- パーソナルカラー診断、骨格診断、顔タイプ診断は、外見の違った面をとらえていて補い合う関係
- 大人の女性は骨格診断を基準としてスタイルアップを図り、違和感があれば顔タイプの検討を
- 骨格診断ストレートタイプは、顔タイプでバリエーションを豊かに
顔タイプ診断も骨格診断も、パーソナルカラーも、その方の本来の魅力を引き出してくれる素晴らしい手法であることは間違いありません。上手に利用して、皆様がファッションライフをもっと楽しく豊かなのものにできますよう願っています。
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