私はパーソナルスタイリストの仕事を始めて2年めに骨格診断を学びました。2014年のことです。その頃はまだ骨格診断は一般には浸透しておらず、自分の骨格タイプを知っている方は少数派でした。その後、骨格診断は一種のブームとなり、簡易的な診断が受けられる百貨店のサービスは予約の取れないほどの人気、書籍は何冊も出版され、ファッション誌の特集でも頻繁に骨格診断特集が組まれるようになっています。
けれども、これだけ骨格診断が普及しても似合う服が自分では買えないというお客様からの相談は絶えません。骨格診断を受けたことで服が買いにくくなってしまった、というお悩みもちらほらと。せっかく診断を受けても悩みが深まってしまっては残念ですね。
一方で、2026年が明けようとしている現在では、診断に縛られることへの疲れから「診断結果なんて関係ない」「診断はやめました」という声も聞かれるようになりました。プロのスタイリスト自身がそう宣言するケースもあります。診断がクライアントの「思考停止」を招き、本当に着たい服を選べなくさせているという事情を反映してのことですが、骨格診断を全否定するのは、少し違うと私は感じています。
骨格という身体的特徴が服の似合わせに影響を与えるのは、否定できない物理的な事実だからです。診断を捨ててしまうことは、せっかく手に入れた「なぜこれが似合う(似合わない)のか」を論理的に解明するための強力な物差しを捨ててしまうことでもあります。
悪いのは診断というツールではなく、それを「思考停止して守るべきルール」にしてしまった扱い方。
そういった診断後の「似合う」と「好き」のジレンマをどう考えるか、この記事がヒントになればと思っています。
骨格診断を「服探しのマニュアル」にすると迷子になる理由
骨格診断が「似合う服に出会える魔法のルール」だと謳った本も以前は出版されていましたが、骨格診断が魔法ではないと気づいている人はすでにたくさんいるのではないでしょうか。その理由はこんなことです。
骨格診断の理論的限界
ある骨格診断の本では、ファッションアイテムと骨格タイプを結びつけて、例えば、
ワイドパンツ: ストレート◎, ウエーブ×, ナチュラル◎
と書かれています。けれども、ウェーブタイプの私はこの2〜3年は専らワイドパンツ派です。(参考記事:40代・大人女性のワイドパンツの着こなし)
上写真はよく売られているタイプのワイドパンツですが、柔らかいとろみ素材でウエストラインが高い位置にあり、さらに上写真のように共布ベルトがついています。これは、ストレートの方が着ると太って見えます。こういったワイドパンツはウェーブタイプの方が違和感なく穿きこなせるんですね。
「ストレートタイプはタイトスカートしか穿けない」の誤解
さて同じ本のストレートタイプに合うスカートの欄には
タイトスカート◎、台形スカート×、フレアスカート×、プリーツスカート×、ティアードスカート×
との記載。えっ!ストレートタイプってタイトスカートしか穿けない??
と驚かれた方ご安心を。私もです。×になっている、プリーツ、フレア、ティアードもストレートタイプに似合うものを見つけるのは不可能ではありません。現に私はすべてストレートのお客様に提案経験がありますし、台形スカートなどは、ストレートタイプに積極的に似合うデザインだと思っているほど。
このように、OKかNGかは、骨格診断タイプ(ストレート/ウェーブ/ナチュラル)ごとにNGアイテムとして一括りにしてしまうことが、実際にはできません。
顔タイプ診断のこと。年代や身長による個人差も大きい
骨格診断のセオリーが除外している要素として影響が大きいのが顔立ちです。これに関しては最近「顔タイプ診断」という新たな診断手法が出てきました。(参考記事:新たなファッションの法則、顔タイプ診断って?)
それから、スタイリングの経験上無視できない要素は年齢と身長です。例えば、170㎝を超える長身の方や60代以上の方は骨格がウェーブタイプに該当していても、ウェーブに似合うとされているフェミニンでスイートなテイストで全身を固めてしまうと違和感が拭えないことが多いのです。同じように、胸元を開けた方が素敵なストレートタイプも60代後半以降は開けすぎない方がいい場合も多いと感じます。
これは私のスタイリング現場からの経験則です。他にも、O脚・X脚や、ふくらはぎの張り具合など、脚の形は骨格診断の3タイプとは関係なく各タイプいろんな方がいらっしゃいます。なので、どの骨格タイプよりも、個々人がどんな脚かによってスカートのベスト丈やスキニーパンツが似合うか等々は変わってきます。
骨格診断のセオリーを知って「そうだったのか!」と目から鱗が落ちることは素晴らしいのですが、それはお洋服について漠然と感じていた違和感や疑問に対し、明確な説明が得られるから、という方のように思います。不正解の根拠をセンスや感性頼りではなく、はっきりとロジカルに教えてくれるから納得できるのですね。けれども「教え」の一つ一つを守り、まるでマニュアルのように忠実に似合う服を探そうとすると、服選びに的外れな制限がかかり、迷路にはまることになります。
見なれない、着なれない、買いなれない
診断を受けても似合う服が見つけられない理由の二番目は、骨格診断から似合うと言われたお洋服がこれまで馴染みのないテイスト・系統であることじゃないかと思います。
だいたいにおいて、診断結果が自分の好みにぴったり合っていたという方は少数で、好きな服とは全然違うタイプだったという方が過半数。骨格診断やパーソナルスタイリングに興味を持つきっかけは、それまで「好みでなんとなく」着ていた服に違和感が出てきたり、疑問を持っている方々なので「似合う」と「好き」の乖離がある状態が普通なのでしょうね。
そんなわけで、診断で似合うと言われたその服は
見なれない・・・似合っているかどうかが感覚的に分からない
着なれない・・・自分じゃないみたいで落ち着かない
と、戸惑ってしまうのも無理のないこと。
一方で、スタイリングの現場では「見なれない服。だけど、なんだかとても良いかも」「似合うってこういうことね!』と感じて下さる方も多いのです。(そうでないからといって落胆することはありませんヨ!)自分で選んだ服への違和感が強かった方ほどそのギャップを感じ取りやすいのかもしれません。
そして、一番の障壁は
買いなれない・・・どこに売っているのかがわからない。選び方もわからない。
Vネックのトップスを着てこなかった人がストレートタイプと診断された場合、いつも行っているショップにあったとしてもまず眼中に入っていません。だから、どんなVネックのアイテムを買ったらいいのか見当がつかなかったり、良し悪しも分からなかったり。
「ユニクロ=ストレート向き」という極端な情報の落とし穴
骨格診断士によっては、ストレートはユニクロ、ウェーブはGU等と、アイテムどころかブランド全体で括ってしまわれる方もいらっしゃるようです。これは、現実の服選びの指針としてはほとんど役に立ちません。似合う服のテイストをそのブランドのイメージで理解するという意味では良いのですが。例えば、ストレートは「シンプルベーシック」が似合うからユニクロと結びつけられるのでしょうが、当然、ユニクロの全アイテムがストレートタイプの方に似合う訳ではないんですね。むしろ素材感の面では、ストレートタイプが使えるユニクロのアイテムは限られており、ウェーブやナチュラルのほうがユニクロでのバリエーションは多いと私は感じています。
大切なのは診断結果ではなく、それをどう生かすか
骨格診断が正確さに欠けていてマニュアルとしては使えず、自分になじまないのならどうすればいいのでしょうか?ーー大切なのは、どんな診断結果を得たかではなく、それをどう使うか。
正解探しではなく、自分の体型を知るツールにする
究極的には異なる体型をしている全員。それを分かりやすく3〜7タイプで分類しているのが骨格診断ですから、例外のあるルールになってしまうのも仕方のない部分ではあります。ここで言いたいのは、骨格診断は役に立たないという残念な結論ではなく、骨格診断は「服選びの正解」を教えてくれるものではなく、自分の「体型の特徴を知るツール」と考えれば、頼もしい道具になってくれるということです。
最も大事だと私が思うのは、骨格診断は、どんな視点で自分の体を見ればいいのかを教えてくれる点です。例えば、骨格診断で重視される体の厚み。似合うお洋服のデザインとそれの間に相関関係があること。恥ずかしながらパーソナルスタイリストになる前の私はありませんでした。これまで知らなかった観点を得て自分自身を新しい目で見られることが大事なエッセンスだと思います。
それから、素敵に見えない服や様にならないコーディネートになってしまった時、スタイルが悪いから、背が低いから、着る人が着れば素敵なのに・・・と、思わず自分のコンプレックスに結びつけて考えてしまうことが誰しもありますよね。けれども骨格診断やカラー診断は、似合わない理由、いまひとつ垢抜けない原因は、他人と比べた美醜ではないところにあることと、その根拠をはっきり示してくれます。それが各種診断ツールのまたとなく優れた点です。
ファッションの幅を広げて成功体験を積む
さてそんなパワフルな骨格診断ですが、自分の好みとは逆の診断結果になってしまう人の多いこと・・これが悩ましいところです。かわいい服が好きなのに診断結果はストレート(またはナチュラル)、かっこいい服が好きなのにウェーブタイプでショックだったなど、骨格診断あるあるですね。
たとえ診断結果を出されても、これまで培ってきた好みはすぐには変えられません。またその「好き」はあなたの内面の大切な一部なのですから変える必要もないんですよね。
けれども「私はこういうのが似合うから。あれは似合わないから」という長年の思い込みが、似合うお洋服を遠ざけていることがあるのも事実です。
似合うと診断されたものが意外であっても、とりあえず着てみる、というチャレンジも大切です。あくまでも自分のファッションの方向性を増やすつもりで。
好きなお洋服は着ているとますます板についてくることがありますが、逆も然りです。たとえ最初は良さが分からなくても、似合うお洋服がご家族に好評だったり職場で褒められたりしているうちに、だんだんと自分になじんできたり、着ることで「好き」に変わってくることもあります。そうやって、ビジュアル面の成功体験を積み重ねることで自分のスタイルになっていく。ファッションが楽しくなって、自信がついていく。ファッションの幅を広げる時、骨格診断の裏付けがあると思い切ってチャレンジできますね。
私のチャレンジアイテムの一つがヒョウ柄です。アニマル柄を積極的に着ようと思ったことは骨格診断以前にはありませんでしたが、今ではワードローブにないと足りない気がするアイテムの一つですし、これをどうコーディネートするか考えるのもワクワクします。
ファッションは人をハッピーにしてくれるもの
ある素敵なマダムの名言です。診断ツールは本来、目的ではなくファッションを楽しむための方法の一つです。自分らしく、心地よく、あなたがもっと自分を楽しむために存在するツール。それが、ワクワクを生み出してくれれば「正解」ではないでしょうか。
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コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして、高校生です。コメント失礼します。
最近、自分がストレート体型だと気付いて、似合う服を調べてみたら、《フォーマル、シンプルに、引き算で》と自分の好みの女の子らしい服とは真反対の記事ばかりだったんです。
お出かけするのにお洋服を選ぶとき、「今まで買ってきたものは全部だめじゃん…」と悲しくなって泣いてました。
でも、この記事の、お写真に写ってる皆様、女の子らしいお洋服を着ているけれど、とても似合っていて、素敵でとても励まされました!!!元気になりました。
すみれ様
コメントを頂いていたことに全く気付かず、こんなに遅いレスポンスになってしまってごめんなさい。
高校生の方からコメントをもらうのも初めてでとても嬉しいです。
骨格診断を受けて、好きなものが着られないように感じてしまうと悲しいですね。
この記事を読んで元気を出せたなら何より嬉しいです。
パーソナルスタイリストの経験から言いますと
高校時代は自分の好きなお洋服が着られるなら思いっきり楽しんで着たほうがいいですよ。
骨格診断のタイプに合わないものでも10代ならば全く問題なし。
骨格体型の特徴は、年齢が上がるごとに顕著に出てきます。すみれさんが大人になり
「あれ?」という違和感を抱いた時に骨格診断をふりかえってみても遅くはありません。
逆を言えば、骨格タイプに合わない好きなものを着られるのが若い頃の特権です。
これまで以上にファッションを楽しんでくださいね。