パーソナルスタイリストの髙尾香織です。
以前にご紹介した、お客様ご夫婦のバウリニューアル第一弾は、多くの方にご覧いただきありがとうございました。第二弾として、私と夫の撮影を今年の初めに行いました。
バウリニューアルという言葉を聞きなれない方も多くいらっしゃるかもしれないので、ご説明しますと・・・
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バウリニューアル(Vow Renewal)とは、文字通り「誓いの更新」を意味する言葉です。
長い歳月を共に歩んできたカップルが、改めて愛を誓い合うセレモニーのことを指します。
スタイルはさまざまで、チャペルやホテルでゲストを招き、ドレスやタキシードで行う本格的な形式もあれば、家族との食事会の中で静かに行うもの、あるいはサプライズとして企画されることもあります。
バウリニューアルは、単に挙式をもう一度行うというものではなく、これまでの歩みに感謝を込め、ふたりの絆を見つめ直し、新たな誓いを交わす時間です。
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その誓いのセレモニーを写真の形で行うのがこの企画です。提携する写真家さんと一緒に作り上げていくもので、私はスタイリングを担当し、お二人のための撮影プランの最初から撮影当日までサポートさせていただきます。この大切な一日を、私自身も夫婦として経験しておくため、私と夫との撮影を行いました。
準備期間を含めた数ヶ月と、ゴールである撮影当日までの制作の全工程が、素晴らしい時間となりましたので、ここに紹介させていただきます。
まずは「フォーマル編」からご覧ください。
◼︎大人カップルの記念写真|フォーマル編 スタジオ撮影
二人ともが正装で撮影するスタジオ写真です。タキシードとドレス、スーツとワンピースといった組み合わせも検討しましたが、何が自分らしいのかと考えたときに、私が好きなスーツ姿がベストだと考えました。そして、正統派記念写真的一枚としてスタジオ撮影していただいたのが、トップにある写真です。カップルの記念写真の王道とは少し違う印象かもしれませんが、これが自分たちの正装だという納得感があります。
同じ写真のカラーバージョンはこちらです。クラシカルな雰囲気がとても気に入っています。
◼︎フルオーダースーツに込められた特別感
今回特別なのは、夫用のスーツも私のスーツも、フルオーダーで仕立ててもらったことです。Andelさんのご提供により、約4ヶ月をかけて制作していただきました。
このスーツを仕立ててくださったのは、30代のテイラーでありデザイナー 佐藤真理子さんです。今回のオーダーを通して私は彼女に深い信頼を抱くようになっています。
こちらの希望をただ聞くだけでなく、体型の個性や生地の癖、どんな場で着るのかという空気まで含めて、細部に心を配ってくださいました。
フルオーダーのスーツが、チェーン店などでのパターンオーダーやイージーオーダーとは違う点として、仮縫いがありますが、それを複数回行うことがあったり、さらに「中縫い」という段階が加わることもあると教えていただきました。
こうしたスーツ制作の長い「助走」で、佐藤さんが、スタイリストである私の、一般的ではない細かな要望に真摯に耳を傾けてくれ、お客様への敬意を決して忘れないその姿勢に、何度も感動させられました。縫製やシルエットに対するこだわりを声高には語られませんが、仕上がった服には確かな熱が宿っていて、それが着る人の背筋を自然に整えてくれる一着です。フルオーダーはもとより、オーダースーツ自体が初体験の夫も「体に吸い付くような着心地で、吊るしのスーツとは全くジャンルの異なるものだと感じる」という感想でした。
シャツと、ネクタイなどの小物の合わせは私の担当で、パターンオーダー品と既製品を組み合わせています。
夫のスーツはベーシックなデザインですが、私のスーツは明るいブルーというだけでなく、ロング丈のジャケット&クロップド丈ワイドパンツという変則的なデザインです。レディーススーツはデザインのバリエーションが多くて自由なものですが、パンツスタイルというのが自分らしいと感じています。
女性のスーツに「ドレスではない美しさ」を求めた今回のようなオーダーは、既製服ではなかなか出会えないものです。
手を通したときの感触、鏡に映ったときの後ろ姿の美しさに、作り手である佐藤さんの手と想いと、時間が宿っているようです。また、まるで自分の体の一部のように感じられる着心地は、パターンから私だけに合わせて作られるフルオーダーの真骨頂だと体感しました。
インナーには、明るいブルーのオーガンジーのブラウス(既製品)を組み合わせました。夫と私ともにパーソナルカラーがブルーベースで、明るく鮮やかなブルーが似合うタイプです。カラーを見て結婚したの?と現場では言っていただきました^m^
◼︎ピンショットで映し出される個性
写真家さんの提案で、夫の「ピン」の撮影もしていただきました。通常のブライダルフォトでは新婦の方に脚光が当たる傾向がありますが、バウリニューアルの形はそれぞれの夫婦の個性や関係性によって様々であることも大きな違いです。
本人はいまひとつピンときていないようですが、 これまで見たどの写真よりも夫らしく「映えた」一枚だと感じています。鋭さと気負いのなさが共存する夫の内面性が、写真として精確に切り取られていると感じるのは初めてのことでした。
私のピンのショットはこちらです。個人的なコーディネートのポイントは、ブルーのパンツスーツにヒョウ柄のショートブーツを合わせたところです。
このスーツは、インナーにシャツを着たり、パンツを白にしたり、今後も「ここぞ」という場面で、様々に活用したいと思っています。行ったことがないですがディナーショーに行ったり、ヤーレンズのライブに、カラーシャツとアスコットタイを組み合わせて参戦したいと思っています(笑)
◼︎番外編:夜のロケーション撮影
最後に、今回初めて体験たロケの写真をご紹介します。二人の記念写真をどう撮ってもらうか、自分たちらしい写真とは?と考えているときに、写真家・齋藤久夫さんからご提案いただいたのが「夜の中華街での撮影」でした。昼間の人出では撮影が難しいこと、そしてエキゾチックな夜の雰囲気も魅力的だということで、真夜中のロケを敢行していただきました。
雑然とした街中に、あえてスーツ姿で立つことも、自分たちらしく感じています。
龍を模して蛇行するように配置されたオレンジの照明が、異国の夜の幻想的な空間を生み出し、その中にふたりが違和感なく馴染んでいるような、不思議な質感の写真になりました。
齋藤さん曰く「おふたりが持っている、俗世から離れたような雰囲気や異次元感が、中華街という舞台でよく表現できた」とのこと。
「えっ!?俗世間ではない?私たちってそう見られているのか?」と驚きましたが、一連の写真を見てくださった方々からは「中華街でのショットがいちばん好き」という感想も多くいただきました。
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今回の撮影に関わってくださった方々をご紹介します。
スーツをご提供くださった Andel 佐藤真理子さん
シャツとネクタイを制作してくださった YOSHIDAYAさん
ヘアメイクを担当してくださった 後藤マキさん
その人が最も輝くポージング・アングル・ライティングを文字通り瞬時に捉えるフォトグラフィスト 齋藤久夫さん
そして、途切れることなく長時間の現場を温かく支えてくださった撮影スタッフの皆さん
全員の力と想いが集まって生まれた渾身の一枚に、心から感激しました。
私がスタイリングの仕事で意識する「初めてだけど自分らしい」と感じられること。これまで身を置いたことのない場所や装いでも、やってみたらとても自然で、しっくりきた——
そんな感覚が、写真の中に映っています。
そのビジュアルに出会えたことに、心から感謝しています。これが、私にとっての初めてのバウリニューアル体験となりました。
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次回の記事【カジュアル編】では、カジュアルな装いでのスタジオ撮影をご紹介予定です。
※今回の撮影はモデルケースとして、フォーマル/カジュアル両スタイル、ロケーション撮影を含めて実施しましたが、実際のバウリニューアルプランでは「おひと組につき、特別な一枚を撮る」という形でご提案しています。
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